
AI & Automation
AI議事録ツールを買う前に。手持ちのAIで作れないか一度考えた話
会議のあと、誰かが議事録を書く。書いた本人以外はほとんど読まない。次の会議で「あれ、どうなりましたっけ」から始まる。
この流れをどうにかしたくて「AI 議事録」で調べると、出てくるのはツールの比較記事ばかりでした。どれも似た構成で、製品が並んでいて、最後に「まずは無料トライアルから」と書いてある。読んでいるうちに、そもそもツールを増やす前に考えることがあるのでは、と思いました。
**この記事の結論:**専用ツールが要る会議と、手持ちのAIで足りる会議があります。先に自分たちがどちらなのかを見極めて、そのうえで「議事録ができた後どうするか」まで設計したほうが、ツール選びより効きます。
この記事で分かること:
- 専用ツールを買ったほうがいいケースと、その理由
- 手持ちのAIで足りるケースと、その回し方
- それでも比較するときに見るべき5つの観点
- 議事録を決定事項とTODOに変えて、次の行動につなげる仕組み
1. 先に立場を書いておきます
この手の記事は、書き手の立場が分からないと読みにくいので先に書きます。
**うちは議事録の専用プロダクトを持っていません。**だからどの製品を売る動機もないし、逆に専用ツールを否定する気もありません。うちがやっているのは、業務の自動化を設計して実際に回すことです。その立場から見ると、議事録は「ツールを入れれば終わる話」ではなく「会議のあとの行動をどう作るか」の話に見えています。
なので、この記事では特定の製品名は一切出しません。出せば比較記事になってしまうし、料金や機能は変わるのが早いので、書いた翌月には古くなります。代わりに、判断の枠組みを書きます。
2. 専用ツールを買ったほうがいいケース
先にこちらを認めておきます。以下に当てはまるなら、素直に専用ツールを検討したほうが早いです。
① 参加者が多い会議が定例である
5人を超えると、誰が何を言ったかを追うのが人力ではきつくなります。参加人数が多く、それが毎週ある。この条件なら専用ツールの投資は回収しやすいです。
② 話者の分離が業務上どうしても要る
「誰が言ったか」が記録として意味を持つ会議があります。合意形成の記録、取材、面談、外部との打ち合わせなど。手持ちのAIに文字起こしを貼り付けるやり方だと、この分離は苦手な領域です。
③ 録音から集計まで人が触らずに回したい
会議が終わった瞬間に文字起こしと要約ができていて、共有まで自動。この「人が一度も触らない」状態を求めるなら、その動線が最初から組まれている製品を使うほうが確実です。自前で組むこともできますが、労力と維持の手間が見合うかは別問題です。
④ 組織のセキュリティ要件が決まっている
データの保存場所、学習利用の有無、保存期間、アクセス権限。ここに社内規程がある会社は、要件を満たす製品を選ぶところから始めるしかありません。要件が先にあるなら選択肢はツール側で絞られるので、自作の検討に時間を使う必要はありません。
3. 手持ちのAIで足りるケース
一方で、うちのような少人数のチームだと、上のどれにも当てはまらない会議のほうが多いです。参加者は数人、話す順番もだいたい決まっている、記録に残したいのは「誰が言ったか」ではなく「何が決まったか」。
このタイプなら、いま契約しているAIで十分回ります。やっていることは単純です。
- 会議中か直後に、決まったことと宿題を箇条書きでメモする(完璧でなくていい)
- そのメモをAIに渡して、決定事項・保留事項・担当と期限つきのTODOの3つに整理させる
- 出てきた整理を目で確認して、抜けているところだけ足す
ポイントは、AIに文字起こしをさせるのではなく、荒いメモを構造化させるところです。文字起こしは音声の精度勝負になりますが、構造化はテキストの整理なので手持ちのAIの得意分野です。しかもメモは自分で取っているので、内容の正しさを自分で保証できます。
もう一つの利点は、新しいツールを増やさなくていいことです。ツールが増えると、アカウント管理も、社内への説明も、費用も増えます。増やす価値があるかを判断するために、まず手持ちで一度やってみる。それで足りるなら、それが一番安いです。
手持ちのAIで議事録を回すときの3ステップです。
**注意:**会議の録音や自動文字起こしを始める前に、参加者全員の同意を取り、社内規程を確認してください。録音していることを伝えていない、外部の参加者がいる、扱う内容に個人情報や取引先の機密が含まれる——このいずれかに当てはまるなら、ツールの機能の話より先に、運用ルールを決めるほうが優先です。判断に迷う内容なら、法務や顧問に確認してから進めるのが安全です。
4. それでも比較するなら — 見るべき5つの観点
手持ちでは足りない、と結論が出たときのために、比較の観点だけ整理しておきます。製品名は出しません。この5列を自分で埋めれば、どの製品を検討していても比較できます。
| 観点 | 何を確認するか | 見落としやすいところ |
|---|---|---|
| 料金 | 月額か従量か、課金単位(人数・時間・回数) | 参加人数が増えたとき、録音時間が伸びたときの伸び方 |
| 精度 | 自分たちの会話で試したときの文字起こしと要約の質 | 業界用語・社内の略称・複数人が同時に話す場面 |
| 話者分離 | 誰の発言か分かれるか、後から名前を割り当てられるか | オンラインとオフライン(一つのマイクに複数人)で精度が変わる |
| セキュリティ | 保存場所、保存期間、学習利用の有無、権限設定、削除の手段 | 契約プランによって条件が変わることがある |
| 無料枠 | 無料で試せる範囲(時間・回数・機能制限) | 無料枠だと要約や連携が使えず、本番の質が判断できないことがある |
比較で一番大事なのは、自分たちの実際の会議で試すことです。公開されている精度の数値は、たいてい理想的な録音環境での話です。社内の略称が飛び交う雑談混じりの会議で試して初めて、使えるかどうかが分かります。
料金と機能は改定が速いので、検討時点の情報を必ず提供元で確認してください。半年前の比較記事の数字をそのまま信じないほうがいいです。
5. 議事録は作って終わりではない
ここからが本題です。
議事録の効率化に取り組む人の多くが、「作る」ところだけを見ています。でも実際に困っているのは、作った後に何も起きないことのほうではないでしょうか。きれいな議事録が共有され、誰も読まず、次の会議で同じ議論が始まる。文字起こしが自動になっても、この構造は変わりません。
うちが議事録に求めているのは、要約ではなく次の3つです。
| 変換先 | 中身 | ないとどうなるか |
|---|---|---|
| 決定事項 | 何が決まったか。決めた日付つき | 「言った・言わない」が再燃する |
| TODO | 誰が、何を、いつまでに | 決まったのに誰も動かない |
| 保留 | 決まらなかったこと、次に決める条件 | 同じ議論を最初からやり直す |
議事録から自動でこの3つを取り出すのは、いまのAIなら難しくありません。難しいのは、取り出したTODOが追跡されるかどうかです。ここが仕組みになっていないと、どんなに良い議事録でも読まれずに流れます。
議事録から取り出したい3つと、その後の追跡までをまとめました。
6. うちがやったことと地続きの話
うちは以前、メンバーの月次報告の集計を自動化しました。それまでは個別に数字を聞いて回り、表に手で転記し、誰が未報告か目で確認していました。いまは決まった形式で投稿すれば、AIが読み取って集計まで終わり、期限までに出していない人にはbotがリマインダーを送ります。メンバー側の手間は月1回・約2分、管理者側はゼロです。
議事録の話と何が同じか。報告や記録を「集める」ところだけを自動化しても、追跡が人力なら手間は消えないということです。うちの場合、効果が一番大きかったのは集計そのものより、「まだですか」という催促が人間の仕事から消えたことでした。
議事録も同じ構造をしています。文字起こしを自動化しても、TODOの追跡が「誰かが思い出したら聞く」のままなら、会議のあとの停滞は変わりません。逆に言えば、TODOが自動で一覧になって、期限が来たら本人に通知が飛ぶところまで作れば、議事録の精度が多少荒くても仕事は前に進みます。
この考え方の実例は、こちらに詳しく書いています。
あわせて読みたいDiscord月次報告の自動化実録 — AIがスクショを読んで集計まで全自動
よくある質問
手持ちのAIで議事録を作ると、精度は落ちませんか
音声から直接文字起こしをさせる用途では、専用ツールのほうが有利な場面が多いです。ただし、この記事で書いた回し方は「荒いメモをAIに構造化させる」やり方なので、音声認識の精度は関係ありません。人がメモを取る手間は残りますが、そのぶん内容の正しさは自分で保証できます。会議の性質によって、どちらが向いているかを選んでください。
議事録のAI要約が事実と違うことがあります
要約は元の情報にないことを補ってしまう場合があります。対策は二つで、一つは元のテキスト(文字起こしやメモ)を必ず残しておくこと、もう一つは決定事項と数字だけは人が目で確認することです。全文を読み直す必要はありません。決定事項と数字と固有名詞だけを照合すれば、実務上の事故はほぼ防げます。
会議の議事録を効率化する前に、やることはありますか
会議そのものを減らせないか一度考えてみる価値はあります。報告のためだけの会議なら、文章で共有すれば済むことが多いです。うちがメンバーの報告を投稿ベースに変えたのも同じ発想でした。議事録の効率化は有効ですが、そもそも要らない会議の議事録を効率よく作っても、得られるものは限られます。
まとめ
- 専用ツールが向くのは、大人数・話者分離が要る・録音から全自動・セキュリティ要件がある会議
- そうでなければ、手持ちのAIに「荒いメモの構造化」をさせるだけで足りることが多い
- 比較するなら料金・精度・話者分離・セキュリティ・無料枠の5観点を自分の会議で試して埋める
- 録音と文字起こしは、参加者の同意と社内規程の確認が先
- 本当の勝負は議事録の後。決定事項・TODO・保留に変換して、追跡まで仕組みにする
議事録は、作る作業より追跡の仕組みのほうが会社を変えます。うちが業務自動化でやってきたことは、結局そこに集約されています。
会議のあとの記録と追跡をどう仕組みにするか相談したい方は、お問い合わせからどうぞ。
関連記事:AIで業務を効率化する。どの仕事から渡すかの決め方と、うちの実例/Claude Codeの使い方 — 会社まるごとAIで回して分かった導入から実運用まで

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